
オカルト系のサイトでは「パラレルワールド」というキーワードが氾濫しております。
SFの世界でも語られますがその概念が正しく使われているかは怪しいところです。
ところでパラレルワールドとは何なのでしょう?
個々の存在する世界(時空)とは別にそれと並行して存在すると考えられる別の世界(時空)を指します。
言い換えると我々の宇宙と同一の次元を持ちながら、別の現実が存在するという概念です。
と簡単に説明することもできるのですが、ここではもう少し掘り下げていきたいと思います。
パラレルワールド(並行世界)は、完全に科学的に立証された現象ではありませんが、いくつかの物理理論において理論的可能性として語られています。
つまり、「今の科学で証明された事実ではない」が「理論的には説明されうる」というのが現状です。
以下にパラレルワールドを科学的に説明しようとする主要な理論を紹介します。
科学的アプローチによる「パラレルワールド」の説明
1. 多世界解釈(Many Worlds Interpretation)―量子力学
- 提唱者:ヒュー・エヴェレット(1957年)
- 内容:
量子力学において粒子が複数の状態を同時に持つ(重ね合わせ)という原理から「観測されなかった可能性」もそれぞれ別の宇宙で実現しているとする理論。 - 意味:
あなたがコーヒーを飲む世界と飲まなかった世界が同時に存在しているという考え。 - 現実性:
数学的には成り立つが観測・検証ができないため科学的「証明」は難しい。
2. 宇宙インフレーション理論とマルチバース
- 内容
ビッグバン直後に宇宙が超高速で膨張(インフレーション)した際、別々の泡のような宇宙が多数生成されたとされる。 - パラレルワールドとの関係
我々の宇宙とは別の物理法則を持つ宇宙(バブル宇宙)が無数に存在する可能性。 - 意味
別次元や異なる物理定数の世界があるという考えに繋がる。
3. 弦理論/ブレーンワールド仮説
- 内容
弦理論では宇宙は10次元以上あるとされ、その中で異なる次元に他の宇宙(ブレーン)が存在する可能性がある。 - パラレルワールドとの関係
我々が感知できない次元に別の宇宙があり、それと干渉することで重力などが説明できるかもしれないというモデル。
現状の科学的評価
- 上記はすべて「理論上の可能性」としては認められています。
- しかしながら、検証手段がないため、「科学的に証明された」とは言えない。
- 一部の理論(特に多世界解釈)は、解釈の問題であり、実験結果が変わるわけではないため、あくまで哲学的ともされる。
まとめ
質問 | 回答 |
パラレルワールドは科学的に説明できるか? | 一部理論(多世界解釈・マルチバース理論など)で可能性は示唆されている |
証明されているか? | 実証はされていない(実験・観測不可) |
現実に存在する可能性は? | 理論的には否定されていないが、証拠がないため未定 |
量子力学において粒子が複数の状態を同時に持つ(重ね合わせ)という原理を数学的に説明ということもあるのですが、ブレ・ケット記法や線形代数・ヒルベルト空間(内積空間)などの式を示すと違う方向に行ってしまうので興味がある方は各自で調べて頂きたい。
パラレルワールドを題材SF作品
パラレルワールド(並行世界、並行宇宙)を題材にしたSF作品は非常に多く、古典から現代に至るまで人気のテーマです。以下に、小説・映画・アニメ・ゲームなど、ジャンル別で代表的な作品をご紹介します。
小説(文学作品)
1. 『あなたの人生の物語』 テッド・チャン
- 複数の時間軸や因果の概念に揺さぶりをかける短編集。
- 映画『メッセージ(Arrival)』の原作。
2. 『無限の書』 ジョルジュ・ルイス・ボルヘス
- 宇宙に存在する無限の世界を象徴的に描いた短編「バベルの図書館」など。
3. 『ダーク・マター』 ブレイク・クラウチ
- 自分の選択が分岐して無限の世界を生み出す…というリアルなパラレルワールドSF。
映画
1. 『スライディング・ドア』 (1998)
- ドアに間に合った/間に合わなかった、という選択の違いが人生を分ける。
2. 『インターステラー』 (2014)
- 宇宙の次元構造や時間のループなどを扱う。
3. 『エヴリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』 (2022)
- 多元宇宙を舞台にしたアクション×哲学SF。第95回アカデミー賞作品賞受賞。
4. 『マトリックス』シリーズ
- 仮想世界と現実の二重構造。仮想世界を別の現実=パラレルワールドと捉えられる。
アニメ・マンガ
1. 『シュタインズ・ゲート』
- タイムリープと「世界線」の概念でパラレルワールドを精緻に描写。
2. 『平行世界の僕ら』 by 石黒正数(短編)
- 自分の代わりに別の自分が登場する、静かなパラレルSF。
3. 『サマータイムレンダ』
- ループや分岐によって世界の状態が変化していくホラーSF。
ゲーム
1. 『ゼルダの伝説 ムジュラの仮面』
- 同じ3日間を何度も繰り返す中で変化する世界。
2. 『クロノ・トリガー』/『クロノ・クロス』
- 時間・次元をまたぐストーリーで並行世界を多層的に描写。
3. 『バイオショック・インフィニット』
- 多次元宇宙を設定にしたダークSF。ラストの展開は圧巻。
派生ジャンルのキーワード
- マルチバース(Multiverse)
- 分岐世界(Branching Worlds)
- 世界線(Worldline)
- If設定(歴史改変ものも含む)
おすすめの切り口
- 「科学的考証がしっかりした作品が知りたい」
- 「感情に訴えるドラマチックな並行世界」
- 「ゲーム感覚で分岐するストーリー」
パラレルワールドについて科学的考証がしっかりしたSF作品
科学的考証がしっかりしている「パラレルワールド」を扱ったSF作品は、以下のように厳選できます。ここでは、量子力学・多世界解釈(MWI)・相対性理論・時間物理学などに基づいた、リアル寄りの設定・描写がなされている作品を紹介します。
小説(科学考証の厚いパラレルワールドSF)
1. 『ダーク・マター』ブレイク・クラウチ
- テーマ:ヒュー・エヴェレットの「多世界解釈」に基づいた設定。
- 内容:主人公が無数の自分が存在するパラレルワールドを移動する。
- 科学性:量子力学の波動関数と観測による分岐をベースに、哲学的かつロジカルに展開。
2. 『アナトムY』ニール・スティーヴンスン(英題: Anathem)
- テーマ:多元宇宙と並行現実。
- 内容:哲学者と科学者が分離された異世界で、観測や意識と宇宙構造の関係を探る。
- 科学性:量子論、多次元宇宙、意識と実在について深い議論あり。
3. 『時間封鎖』ロバート・チャールズ・ウィルソン
- テーマ:地球が「時間的に隔離される」パラレルな宇宙の存在。
- 科学性:相対論や宇宙論に着想を得た高度な設定。SFファンに非常に評価が高い。
映画
1. 『エヴリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(2022)
- テーマ:多世界解釈と量子分岐を大胆に具現化。
- 科学性:表面はカオスでも、背後には「観測と状態の重ね合わせ」の原理がしっかり。
2. 『コヒーレンス』(2013)
- テーマ:量子のエンタングルメント、多世界解釈。
- 内容:彗星通過中、同じ人物たちが異なる家にいる「分岐世界」が混在する。
- 科学性:低予算ながら、量子物理の知見に基づいた超リアル志向。
3. 『プリデスティネーション』(2014)
- テーマ:時空のループと自己の分岐。
- 科学性:ロバート・A・ハインラインの短編『輪廻の蛇』が原作。自己言及と時間理論が緻密。
アニメ
1. 『シュタインズ・ゲート』
- テーマ:世界線(複数のパラレルワールド)の収束理論。
- 科学性:ジョン・タイターの理論(実在するネット上の人物)や「アトラクタ・フィールド仮説」など、仮説に基づくリアリティのある考証。
科学的キーワードとの対応
キーワード | 扱った作品例 |
多世界解釈(MWI) | 『ダーク・マター』, 『コヒーレンス』 |
量子分岐と観測問題 | 『シュタインズ・ゲート』, 『エブリシング・エブリウェア』 |
宇宙論・相対性理論 | 『時間封鎖』, 『インターステラー』 |
哲学と量子力学の交差点 | 『アナトムY』, 『プリデスティネーション』 |
さらに深く読みたい方へ
もし「科学考証の解説も読みながら作品を楽しみたい」という方には、以下もおすすめです:
- 📖 『時間は存在しない』カルロ・ロヴェッリ(パラレルワールド理解の背景に)
- 📖 『宇宙は本当にひとつなのか』ショーン・キャロル(多世界解釈を科学的に論じる)
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